3Dプリンターによる造形、ものづくりは、一般的にAdditive Manufacturing、付加製造と呼ばれます。
足し算の製造方法
従来からある削り出し(切削加工)は、丸棒とか板材から目的の形状へと削っていく、学生の頃の彫刻のような、いわゆる引き算の製造方法です。
これに対して、3Dプリンターによる造形は、積み重ねて形状を盛っていく足し算の製造方法になります。ですので、積層造形と呼ばれることもあります。
3次元形状データから実物へ
紙に印字する2次元のプリンターは、PCなどからデータをプリンターに送り、プリンターで印刷します。
これと同様に、3Dプリンターの場合は、3次元の形状データ、3D-CADデータをプリンターに入力して、3次元形状の製品を作ります。
グーテンベルグが一般化させた活版印刷は、版を彫り、インクを転写させることで同一の印刷を大量に行うことができるようになりました。
プラスチックの成形の場合は、金型を彫り、加熱して溶かしたプラスチックを型に流し込み、冷やして固めることで、同じ形状のプラスチックの成形品を大量生産することが可能になりました。
3Dプリンターは、紙のプリンターと同様に、「版・型」を必要としません。
データだけが命です。
型を作らなくても良いので、ダイレクトに3次元の形状データを形にすることができ、その手間が圧倒的に少なくなるのが、メリットです。
時短と効率
中間に存在する、「版・型」の制作を経由する必要がないので、最終目的の「かたち」を作るまでの労力が少なくてすみます。すなわち、開発の時間短縮が可能になり、効率が上がります。
また、イメージをラフな3D形状データにして、それをプリントする。細部の形状を最適化して、3D形状データをアップデートしてプリントし直す。この開発サイクルを回す速度と効率が改善されますから、ゼロからイチを作るまでの開発期間と効率が確実に向上します。
これが、3Dプリンターのメリットの一つです。
多様性への対応
「版・型」を用意する方が、大量生産向きです。
そして、生産コストも抑えることができます。
しかし、Aを作ってから、ちょっとバリエーションをつけたA'を作りたい時、ちょっと困ったことになります。
99%は同じなのに、バリエーション部分の1%の部分だけ、「版・型」を作り替えればいいのですが、場合によっては「版・型」そのものをゼロから作った方がいい場合が多々あります。
「版・型」をAとA'を用意するのは大変だし、両方とも保存しておく必要はないからと、AをA'に作り替えてしまうこともあります。
でも、マーフィーの法則ではないけど、AをA'に作り替えてしまうと、なぜかAの需要が出てくるもの。再び「版・型」をA'からAに作り替えるか、新規に作るか悩んでしまいます。どちらにしても、時間とお金がかかります。
しかし、3D形状データをかたちにする3Dプリンターの場合、AからA'に3D形状データを変更してしまえば、あとは3Dプリンターでかたちにすればいいだけのことです。
Aだろうが、A'だろうが、A"だろうが、データの形になっていれば、いくらでもバリエーションを作ることができます。
このように、ちょっとだけ違う、という多様性への対応が非常に簡単にできるメリットがあります。
一人ひとりに合わせた「カスタマイズ」は、3D形状データさえあれば容易に「かたち」にできるのが、3Dプリンターのメリットなのです。